プラトンとプランクトン

「プラトンとプランクトン」メンバーによるいろとりどりな記事

批評のような詩のような① 宮崎夏次系ー欠落のせかいを描くこと

批評のような詩のような①

 

宮崎夏次系 ー欠落のせかいを描くこと        深沢レナ

 

変身のニュース (モーニングコミックス)

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宮崎夏次系の描くせかいのコードは欠落であって だから背景もないし 空間には壁がないし 階段には柵がないし 床には厚みがない そこにいる人の名前がなぜ 武勇伝さんなのか大学さんなのか 理由もなく つながりもなく なぜかれらがいきなりプロポーズするのか 突然破裂するのか 展開は急激で 死は唐突におこるが ふざけきった背景やセリフでその重さを限りなくゼロにしてしまう

 

「ちょっとお前 首 吊ってきて」

と いわれても逆らいはしない トイレは砂漠のまんなかにポツンとあって 中で首を吊ろうとする男にOLがお茶を運んでくる 彼が遺書を書いているトイレの横で 竜田揚げを食べる彼女 日差しはつよく 暖かな空気 遺書は長すぎて書き終わらない

「遺書ナガスギワロタ」

                    (「昼休み」『変身のニュース』)

 

ここのせかいにあるものは 重さをもたないものばかりだ そもそもせかいじたいが細い線で描かれていて 空間はさむざむとしている 人物のからだは華奢で 表情は希薄で風がふくと 彼女たちが身につけているスカートはふくらんで 髪の毛は 広がる

せかいは軽いものにあふれていて それらはすぐに飛んでいってしまう 

傘 紙おむつ 花びら 紙ふぶき 発泡スチロール 干された洗濯物 ふくらみ 浮遊するものたち そして人間も飛ぶ

 

重さがあたえられていないから 相手に抵抗することもしない このせかいの人たちはそんな面倒くさいことはせず 他人と関わらず 感情をあらわにしない を あくまでつらぬこうとしている

 

  僕 昔から人と手 繋いだりすると ゲロ吐いちゃうんだ

           (「肉飯屋であなたと握手」『僕は問題ありません』)

 

かれらは人と触れ合うことを極度に嫌がる 閉じこもる 不登校になる ダンボールのなかにこもる 秘密基地に逃げる でもかれらは守られていない 重さがないから 壁がないから 家はすぐに壊され 基盤をもてない かれらは欠落し 孤立し 宙に浮いている

 

  他人事なんだ 全部が

  傍観役に 慣れすぎた せいできっと

  姉との距離感を 未だに はかりきれない

                       (『夕方までに帰るよ』)

 

欠落はくりかえす 重さのないせかいから 欠陥のかぞくから 軽すぎるかれらへ 母は息子を橋から落とし 父はリストラされて犬になる 冷めていく子どもたち 消したはずの感情がときに噴出をおこし そしてまたなにかを壊し それに気づかないまま 同じ道をくりかえす なんども なんども たどって あるのかないのかわからない まぼろしのような 家へ帰る

 

  あの完全な日々が戻らないなら

  博物館なんかに飾ってある

  大きな鹿の剥製の……

  目玉を布できれいにする

  清掃員になれればと思うが

  そんな仕事あるかは分からない

  それより……

  帰り道に後ろからじゃりじゃりと追ってくるのは 一体 誰なのか

  友人なのか 変質者か

  私が昔お墓に埋めてきた者か

  よく分からないが同じ道を

  何度も何度もなぞって

  家へ帰る              

                      (『夕方までに帰るよ』)

 

 

 

夕方までに帰るよ (モーニング KC)

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僕は問題ありません (モーニングコミックス)

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夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない (モーニング KC)

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ホーリータウン (モーニング KC)

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